平成28年度 若手研究者学長表彰 澳门皇冠赌场_澳门皇冠体育報告
大学院生物資源産業学研究部 講師 向井 理恵
食品成分に含まれるプレニルフラボノイドの体内動態ならびに生理機能調節作用の解明
【学術誌等への掲載状況】
1.Mukai R, Horikawa H, Lin PY, Tsukumo N, Nikawa T, Kawamura T, Nemoto H, Terao J.8-prenylnaringenin promotes recovery from immobilization-induced disuse muscle atrophy through activation of the Akt phosphorylation pathway in mice. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 311, R1022-R1031 (2016)
2.Mukai R, Matsui N, Fujikura Y, Matsumoto N, Hou D-X, Kanzaki N, Shibata H, Horikawa M, Iwasa K, Hirasaka K, Nikawa T, Terao J.Preventive effect of dietary quercetin on disuse muscle atrophy by targeting mitochondria in denervated mice. J Nutr Biochem, 31, 67-76 (2016)
3.Mukai R, Fujikura Y, Murota K, Uehara M, Minekawa S, Matsui N, Kawamura T, Nemoto H, Terao J.Prenylation enhances quercetin uptake and reduces efflux in Caco-2 cells and enhances tissue accumulation in mice fed long-term. J Nutr, 143,1558-1564 (2013)
4.Mukai R, Horikawa H, Fujikura Y, Kawamura T, Nemoto H, Nikawa T, Terao J.Prevention of disuse muscle atrophy by dietary ingestion of 8-prenylnaringenin in denervated mice. PLoS One, 7,e45048 (2012)
食品がヒトの健康に与える影響について、食品機能学の観点から研究を進めている。特に植物性食品中のフラボノイドとよばれる成分の生理機能に着目している。フラボノイドはポリフェノールの一種であり、日常的に摂取する食品に含まれることから種々の生体調節作用が研究されているが、フラボノイドを摂取した後の生体利用性の知見の集積が進んでいない。この問題点を解決するため、フラボノイドの生体利用性(吸収?代謝?排泄)をふまえた機能性発現のメカニズムの解明を目指している。これまでに、フラボノイドの構造や、摂取方法によって生体利用性が大きく変化することを明らかにし、新規のフラボノイド代謝経路として、腎臓での脱抱合経路を発見した。生理機能性発現では、廃用性筋萎縮予防効果や血管内皮機能維持効果に焦点を当てているが、フラボノイドがこれらの効果を発揮するためには標的臓器への到達量?蓄積量と、標的部位でのフラボノイドの代謝変換が大きな鍵になることを提唱した。
1.新規生理活性の発見(廃用性筋萎縮の予防?改善へ向けて)
骨格筋量は健康寿命の重要な決定因子であり、運動不足や寝たきりに伴う廃用性筋萎縮への対応策が求められている。我々の研究グループでは、動物モデル実験や培養細胞でのメカニズム研究を通じて、フラボノイドが骨格筋の分解と合成に及ぼす影響を詳細に検討した。これらの検討により、食事由来のフラボノイドが廃用性筋萎縮を予防し、回復を促進させる可能性を世界で初めて明らかにした。
2.プレニルフラボノイドの標的臓器と生体利用性 (高い生体利用性の実現に向けて)
フラボノイドは生体への吸収率が約0.1%と低く、生理活性の発現には生体利用性の高いフラボノイドの構造変換が求められてきた。我々は、フラボノイドにプレニル基が結合した構造であり「プレニルフラボノイド」を摂取した場合に臓器中での蓄積量が高くなることを見出した。フラボノイドの臓器蓄積性を向上させる技術は未だ開発されていないことから、今回の発見はフラボノイドの標的組織での効率的な機能発現につながる可能性がある。
現在、機能性食品の開発は注目を浴びているが、その適切な開発方法は未だ模索中であるといえる。私が研究対象としているフラボノイドの生理機能性研究においては、ある特定の条件下(例えば栄養バランスの欠如状態や疾病状態)で活性を評価することが多い。これは、食品成分が生体に及ぼす影響が穏やかであり、実験条件の設定に制約があるためである。しかし、この手法では生体へ及ぼす効果について限定的な結果しか得られず、普遍的な情報へ展開できないことが問題である。私はこの溝を埋めるべく、食事に含まれる基礎栄養素の違いや、健康状態の違いによって引き起こるフラボノイドの効果の違いを明らかにしていきたいと考えている。これらの組み合わせにより、食品の利用方法の選択と機能性発現との関連性を明らかにすることができ、資源活用に向けた基礎的な知見を集積にすることに繋げたい。基礎研究の積み重ねてゆくことで、地域貢献をはじめとした社会還元を行っていきたいと考えている。
【研究概要HP】
http://www.bb.tokushima-u.ac.jp/app/wp-content/uploads/2016/07/c46251c2af9a33abb46d84ad737461d7.pdf