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CT画像のシュミレーションで呼吸を見える化し、小児の睡眠時無呼吸の治療法を探る

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歯学部 小児歯科分野 教授 岩﨑智憲(いわさき とものり)研究室


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(写真左側)ひかりフェローシップ 大学院口腔科学研究科 口腔科学専攻 3年 幸平 若奈(こうひら わかな)
(写真右側)ひかりフェローシップ 大学院口腔科学研究科 口腔科学専攻 3年 前尾 慶(まえお けい)

 

眠っている間に呼吸が止まる状態を繰り返す「睡眠時無呼吸症候群」。
睡眠時無呼吸は大人の疾患と思われていますが、子供にもみられ、こうした症状が子供におこること自体、あまり知られていません。
睡眠時無呼吸を歯科的アプローチで治そうと研究に取り組む岩﨑智憲教授の研究室を訪ね、研究室を代表して院生の前尾さん、幸平さんにお話を伺いました。

睡眠時無呼吸を引き起こす歯並びと呼吸の関係

「睡眠時無呼吸の治療は扁桃腺の手術など耳鼻科がメインですが、顎が小さいために気道が狭くなっていることが原因で睡眠時無呼吸を引き起こしている子は、耳鼻科の手術では治らないこともあります。
顎を普通の大きさにすることで、治る見込みがあると考えられていますが、治療に関してはまだ研究段階です」という岩﨑先生。

小児の睡眠時無呼吸について岩﨑先生が行っているのは、パソコンを使ったシミュレーションを主に、呼吸の状態をCTデータ(X線画像を再構成して作る立体画像データ)を使い、呼吸がきちんとできているかを評価する世界的にも珍しい解析法を用いています。

岩﨑先生が小児の睡眠時無呼吸の研究を始めることになったのは、「口呼吸の子は歯並びが悪い」という点に着目したのがきっかけでした。その後、「歯並びの悪い子は呼吸がおかしい」、「イビキがひどい」など、歯並びと呼吸の関係を探る中で、睡眠時無呼吸の研究へと発展しました。

「成長期に歯列矯正の一環として、顎を大きくして歯並びを治す治療が行われていますが、歯列矯正は保険がきかない自由診療なので、歯並びが悪くてもそのままにしている場合も。見た目だけでなく、呼吸がしやすくなり、ちゃんと物が噛めるよう、歯並びを正常化することは子供の成長を助けます。そのためにも研究を進め、早期 治療に結びつく、エビデンスを示したいと考えています」。

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睡眠時無呼吸による子供の不眠は深刻という岩﨑先生。「眠れないと成長ホルモンが出ないので、そういう子は体がすごく小さい。
イライラして集中できない、ちゃんと話が聞けないといったトラブルの原因にもなっています。だから治療するとグンと大きくなり、イライラも治まる可能性もあります」。

口呼吸にならざるを得ない低位舌 早期治療が肝心

研究室では、岩﨑先生の研究に関連した治療のための装置や関連する症状など、それぞれがテーマをもって研究を進めています。

前尾さんが研究しているのは 「低位舌」。

近年、〝ポカン口〞といわれる習慣性の口呼吸の子供が増えていて、その中には口呼吸にならざるを得ない低位舌の子も多いといいます。「低位舌の子は口を閉じたとき、舌が上顎についていません。上顎自体が小さく、横に広がって成長できていないため、唇が開いたままになり、歯が前に押し出され、出っ歯になってしまいます。これを改善するために上顎を広げる治療を行い、どういった効果があるかを研究しています」。

上顎を広げる装置(上顎急速拡大装置)を入れることで、鼻の下の骨も広がり、空気の通り道を確保。これにより鼻呼吸を可能にし、低位舌の改善が見込めるのではないかと期待していますが、舌を正しい位置に保つためには、舌のトレーニングと組み合わせる必要も???など、思案を巡らせています。「上顎の成長は脳の成長と密接に関わっていて、小学校高学年くらいまでにはおおよそ完成します。上顎急速拡大装置の効果が出やすいのはそのくらいの年齢までなので、早めの治療が肝心」という前尾さん。

昨年に引き続き、今年も日本小児歯科学会や日本睡眠歯科学会で研究発表を行い、早期治療の重要性を説いています。

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シミュレーションに用いるCT画像は青が圧力が低く、赤が圧力高いことを示しています。
「圧力が高い」ということは、空気が通りにくいことを示していて、色づけして見ることで状態がより分かりやすくなっています。

MFTの効果を3Dモデルで可視化して検証する

幸平さんは上顎急速拡大と、それによる鼻腔通気障害への影響について研究しています。「上顎急速拡大だけでは鼻腔通気障害の改善率は6割程度。さらに鼻粘膜肥厚など、鼻が詰まっている症例では3割程度しか改善効果が見られないと言われています。アレルギー性鼻炎も含め、耳鼻科的な要因のある子たちに何かできることはないかと考え、口腔筋機能療法(MFT)という舌や唇を鍛えるトレーニングとの組み合わせについても研究しています」。

MFTは教本に沿って3か月くらい行うと、口腔機能の発達不全に対して効果が出ると言われていますが、今のところ、それを裏付ける客観的な指標はないのだとか。

そのため幸平さんはCT画像を基に3Dモデルを作成。圧力をかけて空気を流し、効果が出ているかどうか、視覚的に調査する実験を行っています。

子供の歯科検診は「虫歯がなければOK」と思っている人も多いと思いますが、決してそれだけではありません。

「小さいうちからお子さんをよく観察し、離乳食の与え方や食事などに気をつけることで、様々な疾患の予防に繋がります。小児歯科の立場から口腔を通した健康増進を目指し、これからも研究に取り組んでいきたい」と抱負を語りました。

 

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研究方法などもすべて岩﨑先生が編みだしたそう。
オリジナリティの高い研究なので、他の呼吸に関するあらゆる研究分野からも問い合わせも多く、共同研究など声をかけられることも多いそうです。

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