「健康でありたい、病気になりたくない、病気になれば早く治したい、痛みや苦痛を軽くしたい」
このことは人間の本能的願望であり、原始の時代から我々の祖先は自然界の動植物、特に草根木皮の中で有効なもの薬効あるものを経験的に識別し薬としてきました。
これら天然薬物の起源、生産、品質の管理、薬としての作用、用法などについて長い年月にわたり伝承された人類の知恵が、一つの学問として体系づけられたものが生薬学(Pharmacognosy)です。
そして、その科学的な研究をスタンスに天然物の有効活用を目指しているのが当研究室です。
研究概要
- 医薬品シード化合物の探索研究
- 抗フェロトーシス並びに抗炎症、抗ウイルス、抗菌活性物質の探索研究
- 地域特産品の有効利用に関する研究
- 民族薬物調査
医薬品シード化合物の探索研究
1.ニシキギ科クロズルの成分と活性に関する研究
中国でリウマチ治療薬として臨床で使用されている生薬、雷公藤の同属植物、コバノクロズルの成分研究を進め、新規化合物を多数単離、単離した化合物の抗HIV活性を明らかにした。又、雷公藤から単離した化合物のアポトーシス誘導作用も確認した。
雷公藤に関する総説(2006年)が報告されたが、その中には当研究室の澳门皇冠赌场_澳门皇冠体育が数多く引用されており、国際的にも評価されている。
日本産クロヅル
抗HIV活性を持つHyponine A
強力な免疫抑制作用を有するジテルペノイド
ステロイド剤を上回る免疫抑制活性
2.ウズベキスタン産薬用植物の成分と活性に関する研究
1998年からウズベキスタン国立植物園との共同研究を精力的に進めている。2004年には植物園職員オリム氏を招聘した。
セリ科Prangos属並びにFerula属薬用植物から、多数の新規セスキテルペン、クマリン並びに含硫化合物を単離し、それらの活性を明らかにした。
又、タデ科薬用植物から、最近寿命を伸ばす化合物として注目されているレスベラトロール並びにその誘導体を多数単離した。
又、生薬芍薬の同属薬用植物の成分研究を実施した。
3.コロンビア産薬用植物の成分研究
2000年から3年間に渡り、南米コロンビアの薬用植物調査と材料採集(東京工業大学との共同研究)並びに2004年、コロンビアから留学生を受け入れ本研究を進めた。
現地でリウマチ治療に用いられているチュチュワシ(現地語で震える腰)からサイトカイン産生遊離阻害作用を示すトリテルペン類を単離、キク科薬用植物 susoから新規4員環化合物6種、Hydrocotyle leucocephalataから免疫抑制作用を示すアセチレン系化合物等を単離し報告した。
4.オトギリソウ科薬用植物の成分と活性に関する研究
ウズベキスタン産オトギリソウ科薬用植物の研究をきっかけに精力的にこの分野の研究を開始した。
ビョウヤナギから単離したbiyouyanaginn Aは天然物としては新規骨格を有していること、抗HIV活性、サイトカイン産生遊離阻害作用を示すことから、有機化学者にも注目され、2007年、その全合成の論文が報告された。
その論文掲載誌にはビョウヤナギの写真とbiyouyanaginn Aの構造式が表紙を飾った。オトギリソウ科植物の研究は現在も進行中である。
地域特産品の有効利用に関する研究
地域特産品から機能性成分を探索し有効利用を目指す研究を開始した。 ヤマモモ果実の成分検索を行い、35種以上の化合物を単離した。廃棄されているスダチ搾りかす果皮(約年間3,000トン)に注目し、この成分と作用の追求を医薬品機能解析学分野(土屋教授)と共同研究を開始した。その結果、スダチ果皮より化合物を40種以上単離した。
動物実験を行い、血糖値上昇抑制作用並びに寿命延長作用を発見(特許)した。本研究は現在も継続中である。
又、竹、トウガラシ、キンカン等の成分と機能解明も進めている。
民族薬物調査
1991年以来トルコ、ウズベキスタン、コロンビアへ共同研究で民族薬物調査に参加してきた。
2003年からは当研究室が中心となり「中国雲南省少数民族の薬物調査」(第一次、第二次)を中国科学院昆明植物研究所と共同で進めている。
これまでこの現地調査は5回に及び、この間800種以上に渡る情報と標本を採取し、その成分探索を進めている。
トルコでの聞き取り調査
中国での調査