<研究の背景と経緯>
肥満は世界中で深刻な問題で、世界の8人に1人が肥満を抱えています。
肥満はその他の心血管リスク因子(高血糖、脂質異常、高血圧)とメタボリック症候群を形成し、循環器疾患やがんのリスク上昇と関係することが知られています。一方で肥満があるけれどその他は健康な人もいれば、肥満が無くても不健康な人がいることが注目されています。このような方々は遺伝的背景も含めて病態に違いがあることが示唆されており、肥満の有無とその他の心血管リスク因子の有無による組み合わせを代謝表現型と呼びます。代謝表現型と全がん、部位別がん罹患との関係性について、ヨーロッパにおける研究がいくつか知られています。一方で、肥満がある方が少なく、肥満の健康への影響が大きいアジアにおいては十分な検討がなされていません。
<研究の内容と成果>
本研究では、J-MICC Studyの大規模日本人集団データの前向きコホート解析により、代謝表現型とがんとの関連について検討しました。
対象者53,042人において、追跡期間の9.1年(中央値)の間に4,467人(男性2,423人、女性2,044人)ががんに罹患しました。年齢、性別など交絡の要因となりうる因子を調整したCox比例ハザードモデルにおいて、代謝的に不健康な肥満の方はがんになりやすいという結果になりました。また、部位別がん罹患の解析では、代謝的に健康な肥満、代謝的に不健康な肥満の方は大腸がん、肝臓がんに、代謝的に不健康な正常体重の方はすい臓がんになりやすいことがわかりました。女性のみの解析では代謝的に健康な肥満、代謝的に不健康な肥満の方は乳がんに、代謝的に不健康な肥満の方は子宮体がんになりやすいことが示されました。
<今後の展開>
本研究により、日本人成人において、代謝表現型によって、全がんおよび部位別がんの罹患のしやすさが変わることが示唆されました。今後は、生活習慣と代謝表現型、がん罹患との関係性について遺伝要因も含めてさらなる検討を行っていきたいと考えています。
【プレスリリース】肥満と代謝異常の組み合わせでがんリスクが変わる?~大規模日本人集団の追跡研究結果から~ (PDF 653KB) ※無断転載禁止