新型コロナウイルスの影響で延期されていた医科栄養学科1年生のオリエンテーションが開催された。今年度までの任期なので、学科長としての挨拶はこれで最後となる。今年度も、昨年度と同様、管理栄養士制度と徳島大学医学部栄養学科誕生の経緯を力説する。戦後昭和22年、栄養士制度が誕生したが、栄養士は2年間の修業期間でかつ無試験で資格が取得できるものであり、傷病者に対する高度の栄養管理および国民の健康増進に寄与できる人材を養成するには不十分であった。その状況を打開するべく、より高度な栄養管理を行う職種として管理栄養士制度が昭和37年に創設された。栄養学研究に関しては、“栄養”を扱う学問は、戦争等の緊急時に国民の栄養状態が悪くなると生化学者、生理学者、衛生学者等が栄養学研究に一時的に取り組むものであり、そもそも栄養学を研究する学部?学科が存在しなかった。そのため、国民に対する栄養改善活動および高度な栄養学研究を推進するために私たちの栄養学科は誕生したのだ(黒田喜一郎著 蔵本雑記)。
(医科)栄養学科創設にあたり黒田医学部長は日本における栄養学教育および研究の拠点を視野に入れ研究体制は医学部基礎系教室と同様に講座制とした。講座制とは教授以下、准教授(旧助教授)、講師、助教(旧助手)で構成される研究室である。多くの管理栄養士養成校は、教育科目を担当する教員1名が単独で教室運営している。研究を行う体制としてどちらが優れているかは一目瞭然である。“O大学、N大学を受験した方もいますが、うちの学科の方が研究体制は優れていますよ”と挨拶の中で述べた。
夕方、メールをチェックしてみると新入生からのメールが届いていた。内容は、“研究に興味にあり、徳島大学医科栄養学科を受験しました。是非、先生の研究室で研究のお手伝いをさせてください”とのことであった。そういえば、新入生に対する挨拶で最後の方で、“私も1年生の時から研究室に出入りしていました。皆さんも研究室を活用してください”と言ったこと思い出す。入学したばかりで右も左も分からない状態で研究をしたいとの強い意思表示のメールを目にし、おもわずN助教にこんなメールをもらったことを自慢げに知らせた。意欲がある学生を自分の教室に早期に囲い込む考えが頭によぎったが、“栄養学科にはたくさんの研究室があるので、色々な先生に話を聞くのも役に立つと思います。どこの教室の先生も丁寧に教えてくれると思います。”と返信した。学生にとってベストな選択方法を教えるのが教員としての役割だと思う。
新型コロナウイルス感染で社会は重く沈んだ中、少し明るい兆しを感じることができた。
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