フラボノイドの一種であるノビレチンがT細胞活性化に伴うIL-4産生を高めることを示したOさんの論文がJournal of Clinical Biochemistry and Nutrition誌にアクセプトされた。

ある日大学院生のTさんに卵白アルブミンにより活性化するT細胞をもつマウスを用いてin vitroでフラボノイドを添加し、どのような変化が起こるか調べてもらった。結果はある程度予想通りで、添加するフラボノイドの量に依存して増殖反応は低下するし、サイトカイン産生も低下していた。ただ思いがけないことにIL-4だけは他のサイトカインと異なり添加量依存的に増加していた。ノビレチンがIL-4産生を増強する新規のシグナル経路を活性化し、またそれは他のサイトカイン産生経路と独立した新規なものであることが予想された。IL-4産生を増強できる新しい分子が同定できれば、逆にアレルギーを抑える新たな経路も見つけることができるのではと期待が膨らんだ。

取りあえずT細胞株を用いてIL-4レポーターアッセイ実験を行った。組み換えIL-4レポーター遺伝子を作成しEL-4細胞に遺伝子導入を行ったが、トランスフェクション効率が非常に悪いことが分かり実験は難航した。それぞれの細胞株に適した(高価な)トランスフェクション試薬が販売されていると知り試したが、2-3%程度の導入効率であった。最終的にはNext Generation 4D-Nucleofectorを使用したが、GFPではそこそこの導入効率を確認できたのが、ノビレチン処理をしてもIL-4遺伝子のレポーター活性は2倍程度くらいしか高まっていないことが分かった。

新たな経路を見つけるために、厳しい経済状態にも関わらず網羅的RNAシークエンスを行った。1回目は変動している遺伝子群の特定すら出来ず、新たなサンプルを用意し2回目を実施せざるをえなかった。QIAGEN IPAソフトウェアを用い分子ネットワーク解析をしてみると、GATA-3やc-MAFといったIL-4産生に関わる分子が標的候補であることが分かった。常法だとこれらの分子の発現を抑える実験を行えばいいことになる。早速、サンダクルーズ社よりレンチウイルスによりGATA-3やc-MAF発現を抑制するベクターを購入し、予備実験で薬剤耐性に用いるピューロマイシンの濃度も決定した。実験をしてみると意外にも遺伝子導入安定株は比較的簡単に取れた。ここまでは順調であったが、いざIL-4を測定してみると逆にIL-4産生が高まっている細胞株がほとんどであった。ノックダウンしたタンパク質の発現を確認したが、抗体の相性が悪いのかタンパク質発現低下の確認もついにはできなかった。

卒論生のOさんとMさんが始めた研究。4年生の時は、コロナの影響で研究室への入室が半日に制限されていた。3年間、Oさんと共に行った紆余曲折した研究であったが何とか論文という形でまとめることができた。また副次的ではあるが、3年間、Oさんをはじめとする学生さんと会食する機会も設けることができた。

研究とは関係ないですが、今年は(も)、スポーツや会食を通じた交流を深めたいと思います。他の研究室の方でもOKです。

image002-2.jpg

ベリーズ.jpgprocessed-BD9609A4-1C33-4009-9498-5A3FD87C4840.jpeg

閲覧履歴